最高裁判所第三小法廷 昭和42年(行ツ)2号 判決 1967年5月30日
上告人
飯沼土地改良区
右代表者
倉持信一
右訴訟代理人
大塚粂之亟
被上告人
茨城県選挙管理委員会
右代表者委員長
松野貞夫
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大塚粂之亟の上告理由について。
上告人の本件総代選挙を無効とした被上告人の裁決は、右選挙の管理の任にあたつた石下町選挙管理委員会を拘束し、ひいて上告人自身をも拘束するものと解すべきである。けだし、被上告人は、上告人の機関としての立場に立つ石下町選挙管理委員会に対する上級審の立場に立つて、右決裁をなしたものであつて、その系列下にある石下町選挙管理委員会が本件裁決によつて拘束されるのはもとより、上告人自身も前叙の立場上、その裁決の結果を受認すべきが当然であるからである。また、上告人は、右裁決によつて、直接、自己の権利ないし法律上の利益を侵害されたものとは認めがたく、上告人の再選挙費用の負担その他所論の事由も、事実上被むる不利益にすぎず、これをもつて、上告人が本件裁決の取消を訴求するにつき法律上の利益を有するものとはなしがたい。もつとも、本件のような場合に、土地改良区自身に原告適格を認める民衆訴訟制度を法定することも、立法政策としては考えられないわけではないが、そのような定めのない現行法のもとにおいては、上告人に原告適格を認めることはできない。論旨は、本訴が組合員全員の総意によることを強調するが、そのような事由は、以上の判断に影響を及ぼすものとはいえない。
結局、右と同趣旨に出た原判決の結論は相当であり、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎 松本正雄)